そんな、ある意味「神聖」なものとされてきた「告白」が、次々と消費される転機となったと思われるのが、スペシャル番組『好きになった人』(日本テレビ系)である。司会はネプチューンと新井恵理那(過去には小林麻耶など)。
これは、芸能人が、物心がつくようになった頃から今まで、人生において好きになった人の一覧を「恋年表」として作成。その中から今、特に会いたい相手が登場するというものだ。それは一般人であったり、芸能人であることも多かったが、この番組の特徴は、最後ほぼ必ず、「公開告白」をするという“お約束”があることだった。
それが物議を醸したのが、2013年4月2日放送の第9弾『好きになった人9』。映画コメンテーター・LiLiCoが、お笑いトリオ・Bコースのナベ(すでに引退)に告白し、快諾を得た。そのまま交際に発展するかと思いきや、収録後お互い話し合い、結果お付き合いできなくなったと、彼女が放送後、ブログで綴ったのだ。後日、別のイベントで彼女は「人生で一番短い“春”でしたね。『春が来た!』と思った1時後には“冬”が来ました」と、わずか1時間で“終わり”を迎えたことを回顧していた。
これに対し当時SNS上では「(告白は)単なる話題作りでしょ」と揶揄されていた。この特番は2010年からの放送以来、去年までに計15回、期首期末などで放送されている人気特番である。放送されるスパンは短くて3か月。広い芸能界と言えども、告白したいタレントがそうそういるわけではなく、制作サイドとしてみればリサーチも時間を要する。うがった見方をするなら、相手への本気度が定かではないまま、とりあえずブッキングし、告白に持ち込もうという、“あわよくば付き合ってもらえれば”という邪心が見え隠れする。
◇告白が場を盛り上げるための“装置”に?
そんな「告白コンテンツ」の成功を受け、それを売りにするようになったのが『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)である。法律バラエティと銘打ってはいるが、それが垣間見られるのは後半の10分。それまでは、嫌いな人を実名告白したり、因縁の相手と直接対決するなど、人間の本性をさらけ出す番組となっている。
2013年8月18日の放送でこんな出来事があった。一般女性と交際していたフットボールアワー後藤輝基が、それを知った東野幸治から、いきなり放送中に電話をかけさせ、プロポーズを強いたのである。後藤はいきなりの“無茶ぶり”に慌てながらも、「長らく待たせたな申し訳ない。結婚しようか!」と告げると、相手から「うん」と承諾を受けた。このオンエアは17.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)という高視聴率をマークしている。のちに婚約が発表されたが、実際に結婚したのはその2年後のことである。
この頃から、公開プロポーズが、本当に相手の幸せを思うが故のイベントから、その場をセンセーショナルに盛り上げる手段に変わっていったように思われる。そこで出てきたのが、視聴者とのギャップである。それまでは1つの「番組」の中で時間をかけ、人々がプロポーズをしたいという思いをじっくり聞くことで、その人を応援したい気持ちにさせていたのだが、今やそれが「コーナー」「企画」の中で消化。“共感”がわき上がる前にプロポーズをしてしまうことに、視聴者は誠意のなさを感じてしまうのかもしれない。
◇幸せが“消費”される時代に?