ライフ

【香山リカ氏書評】肩の力が抜ける美術作品との接し方

感性は感動しない 美術の見方、批評の作法』/椹木野衣・著

【書評】『感性は感動しない 美術の見方、批評の作法』/椹木野衣・著/世界思想社/1700円+税

【評者】香山リカ(精神科医)

 本書は本誌・週刊ポスト読者にぴったりの良い本だ。著者は日本を代表する美術評論家で、内容はズバリ「美術の見方」。そう言うと「美術史や鑑賞のポイントが語られてるのか」と身がまえるかもしれないが、そうではない。結論を言えば、「絵とは『かたまり』として雑然と接し、答えも結論も出さないまま感じていたい」というのが、著者がすすめる「美術の見方」なのだ。

 予備知識をいろいろ詰め込んで美術展に出かける必要もない。カタログは、「一度『いい』と思ったら、今度はその絵についていろいろ調べてみる」ために買うもの。また、「いい」と思う絵はあくまで自分の感性に従って選ばれるべきで、「話題作とか有名作とか、絵が大きいとか小さいとかいっさい関係がありません」とも書かれている。

「なんだ、そうなのか」と肩の力が抜けると同時に、「じゃ、どうすれば」と不安になる人もいるだろう。これまで「美術は教養」と思ったり「美術のウンチクはモテるための武器」と考えたりして一生懸命、美術ガイドなどを読み込み、何時間も行列を作って大混雑の美術館に入場したりしていたのが、「ただ、感じるしかない」と言われると「では、どうすれば?」と途方に暮れる。実は簡単そうでこれがいちばんむずかしいかもしれない。

関連記事

トピックス

百合子さまは残された3人の仲を最後まで気にかけられたという(2023年6月、東京・港区)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン