映画公開初日の舞台挨拶で涙ながらに抱き合ったのは、土屋太鳳(23歳)と芳根京子(21歳)。2人ともNHK連続テレビ小説のヒロインを務めた人気女優だ。この2人が、同じ作品でW主演を務めたのだ。今、「朝ドラヒロインW起用」が邦画の新しいトレンドになりつつある。その狙いとは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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今月7日、土屋太鳳さんと芳根京子さんのダブル主演映画『累-かさね-』が公開されました。清純派女優のカテゴリーに入る2人の鬼気迫る演技に、「こんな悪い太鳳ちゃん初めて見た」「芳根ちゃんの豹変が凄い」などの称賛が早くも飛び交っています。
さらに、21日には映画『コーヒーが冷めないうちに』が公開。有村架純さん(25歳)と波瑠さん(27歳)が出演します。こちらはダブル主演ではないものの、「20代の主演級女優が共演」という点では同じ。
しかも、土屋さんは『まれ』(2015年)、芳根さんは『べっぴんさん』(2016~2017年)、有村さんは『ひよっこ』(2017年)、波瑠さんは『あさが来た』(2015~2016年)で、朝ドラのヒロインを務めました。
ここに来て、なぜ映画で「2015年以降に朝ドラヒロインを務めた20代女優の共演」が続いたのでしょうか。
◆「映画館に足を運ぶまでが勝負」の世界
朝ドラは常に視聴率20%を超える日本最高のドラマ枠であり、月~土曜に朝昼の2回に加えてBSやダイジェスト版の放送もあるなど、視聴者との接触機会の多さは特筆すべきものがあります。
それぞれのライフスタイルに合わせた視聴が可能であるなど幅広い年齢層に対応しているため、ヒロインの知名度とステータスは圧倒的。土屋さん、芳根さん、有村さん、波瑠さんも同世代の20代女優と比べると、幅広い年齢層に認知され、性別を超えたファンが多いことは理解できるのではないでしょうか。
映画は、「いかに映画館へ足を運ばせ、自分の作品を選んでもらうか?」が勝負の世界。つまり、テレビやネットなどの他メディア以上にプロモーションが重要なので、「朝ドラヒロイン1人ではなく、2人をキャスティングしよう」という発想になるわけです。
また、若手女優と所属事務所の意識が変わってきたことも大きいでしょう。ネットの普及で、主演女優がドラマの低視聴率報道に悩まされ、スケープゴートにされることが増えたため、「失敗したくない」「そこまでの責任を負わせたくない」という意識が強くなっています。
その点、映画は興行収入の高低こそあるものの、ドラマのようにネガティブな報道をされることはめったにありません。朝ドラヒロインと言えども、「連ドラ主演は年1本程度にとどめ、映画主演や助演出演をはさむ」という慎重な活動スタイルを選ぶ若手女優は少なくないのです。
◆「キャラのかぶるライバル」から「同志」へ