「稀勢の里の引退会見は国技館の大広間になると思われる」──秋場所2日目、相撲担当記者の間でそんな情報が駆け巡った。8場所連続休場からの復活に懸ける横綱・稀勢の里が、初日に白星をあげたばかりなのに──。関係者が一様に首を傾げた騒動の背景にあった協会内の“路線対立”とは。
「稀勢の里にあれだけ大きな声援が送られて場所が盛り上がっていた状況だったから、理解できませんでしたよ」
担当記者の一人は、2日目に起きた“騒動”について、そう振り返る。
今場所の土俵は、初日から稀勢の里に注目が集中する展開となった。初日は勢(前頭1)を相手に、左を差す得意の形で一気に出て寄り切った。稀勢の里にとって237日ぶりとなる勝利に、館内は沸きに沸いた。
その期待の高さは懸賞の数でもわかる。初日に稀勢の里の一番に懸かった懸賞は38本。鶴竜(31本)、白鵬(11本)のモンゴル2横綱に大きく差をつけた。
「2日目以降も花道に姿を見せると、土俵上で横綱や大関が仕切りをしていても『稀勢の里~!』と声援が飛ぶ。懸賞本数が多いから、対戦相手も全力でぶつかってきて際どい一番となり、さらに館内が盛り上がる。横綱本人も気合い十分に見えた」(後援会関係者)
そうやって稀勢の里が執念の相撲を続けるなか、舞台裏では奇妙な騒動が起きていた。