昨年、『専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス)を上梓した作家の橘玲氏は、出版当初、このタイトルに激怒した人々によりネット上でかなり叩かれたという。ヤフーニュースに同書を紹介する記事が掲載された時、「コメントは約1000件ありましたが、99.9%がお怒りなんですよ。何で怒っているかというと、タイトルを見た瞬間に専業主婦である自分たちがバカにされてると思ったようで。そういう本じゃないのに、本を読んでくれたらいいのに、と思ったけど、そんなことを言っても通じない」(橘氏)というほど荒れた。
だが、同書は、日本が女性差別社会であり、いかに女性がこの境遇で上手に生きていくかを説いたもので、専業主婦叩きの本ではない。タイトルに脊髄反射し、激怒した人々が専業主婦を中心に大量に登場したのだ。人はなぜ、批判コメントをネットにわざわざ書くのか。このテーマについて、橘氏とネットニュース編集者の中川淳一郎氏が語り合った。(短期集中連載・第4回)
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中川:橘さんは、こうした状況(炎上状態)になった後、同書のKindle版を無料で公開しました。ツイッターでも「本を読んでくれれば真意がわかるから、無料にするので読んでほしい」と呼びかけたら、コメントがまともになったというか、書籍の真意を理解する人が増えたのでしょうね。
橘:「仕事をやめようかどうしようか悩んでいる女性を応援したい」という趣旨の本なのに、まったく読まずに「専業主婦をバカにしている」という怒りのコメントばかり殺到するので、出版社のマガジンハウスさんの英断で、「そんなにいうなら、タダにするからとにかく読んでください」という期間限定のキャンペーンに踏み切りました。その結果、AmazonやTwitterでは「読んでみたけど、ぜんぜん専業主婦を差別なんかしてない」というレビューやコメントが圧倒的になったんですが、ヤフーニュースのコメント欄はかんぜんに別世界で、なんの変化もありませんでした。ヤフーニュースのコメントはAmazonやTwitterと何が違うんですか?
中川:ネットに慣れていない人たちが、書き込める場といえるのではないでしょうか。2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)は書き込みするにあたっての作法があるんですよ。あそこはアングラ臭が漂いすぎてて、書くのが怖いわけなんですよ。ある程度高年齢化はしているものの、それなりにジョークも分かるし、ネットに慣れた人が一定の秩序をもって書こうとしている面はあります。