中川:安田浩一さんというジャーナリストが、『ネットと愛国』という本を書いていますが、その中で、「極度なネトウヨは実は病気じゃないか」という問題提起をしました。それは、「韓国が日本を支配している」という妄想が起因しているのかもしれません。妄想をする場合って、精神的な疾病が原因かもしれないわけですよね。それを同様に感じたのが、今年の6月24日に福岡でITセミナー講師が刺殺された事件の時です。
橘:Hagexさんですね。
◆「治療が必要な人」だという認識があったら…
中川:「はてな」のヘビーユーザーだった「低能先生」と言われた男による著名ブロガー・Hagex氏の刺殺事件です。犯人は、「はてな」で「死ね」だの「低能」だのと書き続け、通報されて凍結されても新たにIDを作るという行為を長期間にわたって繰り返していたんですね。そのIDの数は数百に及ぶ。これも何らかの病気かもしれない。もし彼が何らかの病名がついていたら、はてなのユーザーや周りの人はもうちょっと彼に優しくしたかもしれないと思うんです。アルコール依存症とか、パチンコ依存症とか、何でもいいんですけど病名があるじゃないですか、それ的な病名です。
橘:「低能先生」というのは周りの人がつけたあだ名なんですよね?
中川:はい、そうです。
橘:本人も自分がそう呼ばれていることは知っていたんですか?
中川:知っていたんですよ。彼は無職で引きこもりの42歳だったのですが、事件が報じられて以後、西村博之さん(2ちゃんねるの開設者)が言うところのいわゆる「無敵の人」という、“失うものがない”カテゴリーに入る人物だと分析されました。そんな中、徳力基彦さん(アジャイルメディア・ネットワーク取締役CMOブロガー)というネット事情に詳しい識者が、「低能先生は決して“無敵の人”ではなかった」という論をフェイスブックで述べたんですね。
何でかって言うと、低能先生自体もはてなにおける著名人になっちゃったっていう話なんです。本来は、Hagex氏や「今日も得る物なしZ」の著者など、はてな著名人を叩く無名の存在だったのに、やり過ぎたせいで、自分が著名人になってはてな民から一斉攻撃を受ける立場になってしまった。ゆえに彼はもはや無敵の人ではないという説です。最初はこの説にすごくびっくりしたけど、すぐ腑に落ちたんですよね。