グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(69)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。
漫談家、歌手、司会者の松鶴家千とせ(80)が持ってきたのは、トレードマークのサングラスだった。
オイルショックで日本が逆境の時代、「わっかるかなぁ~、わっかんねぇだろうなぁ~」の流行語でブレークした千とせ師匠。アフロヘアにサングラス、あごひげの風貌も強烈だった。
「アメリカのジャズ歌手に憧れ、自分でパーマをかけた。今は地毛が少ないから舞台はカツラ(笑い)。サングラスはレイバン。一心同体の必需品です」
今があるのは15歳で縁あった3人のおかげと語る。餅米1俵を売って東京への汽車賃を工面してくれた近所のおじさん、到着した上野でジャズ歌謡教室の広告が載った新聞の切れ端をくれたおじいさん、その教室で出会い、松鶴家入門のきっかけを作ってくれた師匠のお嬢さんだ。