「昔と違って官邸の力が強くなり、役所の力が弱くなった。参与などブレーンが独走した場合、本来は総理を含む政権中枢の政治家や与党が妥当な判断かをチェックし、最後は国会でチェックしなければならない。
だが、官邸に諮問機関が乱立し、誰がどこで政策を決定しているかの過程が見えない。これだけ審議会が多いと総理さえ何がどう決まっているかわからないのではないか。法案ができると与党は官邸の決定に従い、国会も与党の絶対多数で自動的に成立してしまうからチェック機能が働かない」
ブレーンの政策はすべて「総理の決断」という言葉で正当化され、本当の政策決定のプロセスは国民に見えない。それは国が進む道を誤ったときに、責任の所在もはっきりしないということに他ならない。
それは菅直人政権時代の原発事故対応という痛い教訓が物語っている。東日本大震災で福島第一原発事故が発生すると、当時の菅首相は知人の原子力や放射線の専門家を次々に参与に任命し、官邸には15人の参与がひしめいた。その結果、指揮命令系統の大混乱を招いた。
政治主導に見せかけたブレーン主導政治は国民の大きなリスクになっている。
※週刊ポスト2018年11月23日号