12月で85歳を迎える天皇は、現在でも年間約200件にのぼる公務をこなす。天皇の日常を知る人々の言葉に耳を傾けると、その“健康習慣の秘密”が垣間見える──。日々口にする「食事」、その「食べ方」にも天皇の習慣がある。
京都府長岡京市の前市長・小田豊氏が、2010年3月27日に同市を訪問した天皇・皇后と食事をともにした時の様子を振り返る。
「市庁舎内で親しく懇談しながら、長岡京特産のタケノコ料理が入ったお弁当を食べました。両陛下が料理をよく噛んでゆっくりと味わわれていたことを覚えています。会食スケジュールの約1時間をかけて召し上がっていらっしゃいました。私は割と早食いなので、陛下に合わせながらゆっくり食べたことが印象に残っています。また、ひとつひとつの食材に非常にご関心を持たれて、『この食材は?』などと質問されることも多かったです」
秋津医院院長の秋津壽男医師(総合内科医)によれば、「とりわけ重要なのが、ゆっくり時間をかけて食べることと、食事の間隔を空けること。ゆっくり噛んで召し上がることで消化しやすくなります。逆に早食いの人は糖尿病などのリスクが高まる」という。
天皇が普段、宮中で食べる料理には、東京から約100キロ離れた栃木県高根沢町にある「御料牧場」で生産された食材が使われる。調理するのは、宮内庁大膳課の職員だ。
昭和天皇の時代に大膳課に勤め、『陛下、お味はいかがでしょう。「天皇の料理番」の絵日記』(徳間書店)の著書がある工藤極氏が語る。