一方、昨年10月に大原S(1600万円以下)を勝ったタニノフランケルは、3歳にしてオープン入りしましたが、仮にこのまま4歳の6月を迎えてもエアウィンザーのように、1600万円以下に降級することはなく、生涯オープン馬です。オープンだけではなく、現時点で1000万円以下、1600万円以下にいる馬は、生涯そのクラスで競馬をしていくことになるのです。
昨年6月の東京・阪神8日間、函館6日間の「3歳以上」の条件戦を見ると、4歳の「降級馬」がおよそ半数近く勝っている。当然、予想ファクターでも重要視され、「降級馬」と太字で記した予想紙もあったぐらいです。上のクラスで二桁着順続きだったとしても、一つ下のクラスに下がれば、勝つこともめずらしいことではありませんでした。かつて4歳以上のレースの出走頭数が少なかったためにできた制度ですが、現在ではこの制度は役割を終えたのではないかということでしょう。実際夏季競馬では、500万円以下のレースが多く組まれる一方、1600万円以下やオープンでは少頭数のレースが多くなるという弊害が問題になっていました。
これがなくなるとどういうことになるか──たとえば、1000万円以下クラスでただでさえ壁を感じていた馬は、同じレベルの馬を相手にしつづけなければならないし、なおかつすでに2勝をあげた若い3歳馬と走らなければならなくなる。しかも3歳馬のほうが斤量面でも有利なのです。下位に甘んじることの多い馬は、競走馬としての限界がささやかれるようになります。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後17年で中央GI勝利数24は歴代3位、現役では2位。2017年には13週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。『競馬感性の法則』(小学館)が好評発売中。2021年2月で引退することを発表している。
※週刊ポスト2019年1月18・25日号