私「コラムニストの石原壮一郎と申します。伊勢うどん友の会というのをやっています」
吉田さん「へぇ~」
私「伊勢うどんのやわらかくてしなやかなコシは、吉田さんのレスリングの強さに何か影響を与えたでしょうか?」
吉田さん「はい、もう、そのとおりに動けるようになったので、はい」
私「あのやわらかいコシ(の麺)を食べてレスリングが強くなったと言っても過言ではないでしょうか」
吉田さん「は、はい(苦笑)」
今振り返ると、かなり強引で不躾な質問です。しかし彼女は、笑顔でがっしり受け止め、話を合わせてくれました。ああ、なんという大人力。その後、全国で伊勢うどんの知名度がふんわりと上昇し、コシのやわらかさへの理解が広まっていったスタート地点は、まさにここだったと言ってもいいでしょう。
唐突な質問というタックルに続いて、このあとフィジカルな意味での高速タックルも試みました。囲み取材が終わって吉田さんが控室に戻ろうとしていたまさにその瞬間、記者の輪を抜け出して、するすると急接近。「先ほどはありがとうございました。よかったら、これ召し上がってください」と、持参した伊勢うどん三食入りの箱を素早く押し付け、そのままの勢いでツーショット写真まで撮ってもらったのです。彼女はここでも大人力を発揮し、伊勢うどんを手に持ってニッコリほほ笑んでくれました。
その年にブダペストで行なわれた世界選手権で、吉田選手は全試合で相手にまったくポイントを与えずに優勝。もしかしたら、このときの伊勢うどんが少しは役に立ったかもしれません。具体的には関係なかったとしても、伊勢うどんを通じた応援の気持ちはきっと伝わったと信じたいところです。
2018年のレスリング界は、さまざまな問題に揺れました。まだまだ何かと難しい状況かと思いますが、「大人力最強女子」である彼女ならきっと大丈夫。いろんなことをいい方向に変えていってくれるでしょう。指導者としてもタレントとしても、筋金入りの大人力や、伊勢うどんによってもたらされたしなやかさを存分に発揮して、たくさんの大きな花を咲かせてもらいたいものです。