◆カルテに〈特に問題なし〉と記載
日本の医療を牽引する名門病院で一体何があったのか──。取材を進めると、内情を知る東大病院循環器内科の現役医師B氏と接触できた。B医師が語る。
「A氏の一件は、手術中に医療ミスが発生し、かつその点を見落として患者を死に至らしめた可能性が高い。カルテにもその形跡が示してあります」
本誌・週刊ポストはA氏のカルテや死亡診断書、X線写真などを入手し、様々な角度から検証すると、A氏の手術について様々な不可解な点が浮かびあがってきた。
手術中の出来事について、カルテにはこうある。
〈中隔穿刺を行なったが、中隔の肥厚、(中略)何度通電しても穿刺できず〉
〈可変式カテなどを使用するも穿刺できず、これ以上の手技継続は合併症のriskを考慮し、本日は手技中止とした〉
昭和大学横浜市北部病院教授で心臓外科手術の権威として知られる南淵明宏医師は、次のように見解を示した。
「心臓にカテーテルを通すには、心房中隔に小さな穴を空ける必要があります。カルテからは、担当医がカテーテルを何度変えても心房中隔に穴を空けられず、結局マイトラクリップ手術を中断した様子がうかがえます」