日韓関係に、かつてない暗雲が漂っている。元駐韓大使の武藤正敏氏は、かつて直接対峙した経験から、「文在寅大統領の“反日”は歴代の韓国大統領とは質が異なる」と指摘する。
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朴槿恵氏が当選した2012年韓国大統領選の期間中、有力な対抗馬の一人だった文在寅氏に面会したことがある。
駐韓大使として、日本政府の立場と考え方を伝えるためだったが、日韓の経済関係の重要性を切々と説く私に対し、文氏は終始、無言だった。そして文氏の口から初めて発せられたのは、「日本は北韓(北朝鮮)に対してどう臨むのか? 南北統一についてどう考えるのか?」という言葉だった。
「日韓関係よりまず北朝鮮だ。日本が北朝鮮と良好な関係を結ぶなら、日本との関係改善をしてもいい」という意味だと、私は捉えた。
2017年の大統領就任後も、その姿勢は変わらない。文氏にとっての最重要事項は北朝鮮と融和をはかり南北の平和を定着させることである。元徴用工の問題で南北共同の調査を提案するなど常識外のこともする。また、元徴用工への賠償を命じた大法院(日本の最高裁に相当)判決への対応や日韓合意(2015年)により設立された慰安婦支援財団の解散表明などは、日韓関係を何と思っているのかと問いたくなる。
文大統領の反日姿勢は、韓国の歴代大統領と比較しても異様である。