視聴率20%超をキープし、好調が続く安藤サクラ主演の連続テレビ小説『まんぷく』(NHK)。現在放送中の第17週のタイトルは「ラーメンだ!福子!」。新たな展開を迎え、これまで挫折と再起を繰り返してきた夫婦の物語はどうなるのか――。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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朝ドラ『まんぷく』が17週100話目前にして、ついにラーメン作りに突入。安藤百福さんと、その妻・仁子さんをモデルした朝ドラであることが発表されてから、長年親しんできたチキンラーメンやカップヌードルが開発されるシーンを楽しみに待っていた人が多かっただけに、ネット上には歓喜のコメントが飛び交いました。
視聴者にとって16週までの展開は、いわゆる前振りであり、コース料理で言えば、前菜にあたるところ。しかし、その前菜は「再放送しているのか?」と思わせるほど挫折と再起をリピートするハードなものでした。
なぜ福子(安藤サクラ)と萬平(長谷川博己)は、ここまで挫折と再起を繰り返してきたのか? ラーメン編に入ったことで、あらためてその理由が明らかになりました。
◆「ラーメン開発の物語」は一部にすぎない
挫折の象徴は、加治谷(片岡愛之助)の裏切りによる軍事物資横流しの疑い、社員が手榴弾で魚を獲っていたことによるクーデターの疑い、社員の奨学金に関する脱税の疑いによる3度の逮捕シーン。
その他にも、戦中に疎開先で腹膜炎を発症して命の危機、世良(桐谷健太)が塩を専売局ではなく闇市で高値販売するという裏切り、ダネイホンの模造品が出回るという危機、銀行の融資回収や預金者の取り付け騒動による池田信用組合理事長職の辞任などの挫折がありました。
一方、再起は、戦争で家や会社を失ったときハンコ作りをはじめたこと、その商売がマネされて収入が激減すると泉大津に移住して塩業をはじめたこと、産後の肥立ちが悪く命の危機があったことで栄養食品を開発したこと。そして、信用組合の理事長を辞任してからラーメン開発をはじめたこと……二人はお金や家を失っても、その都度立ち上がり、夫婦で事業に励む姿を見せてきました。
全151話の3分の2が過ぎたところで、ようやくラーメン作りに突入したのは、「挫折と再起のリピートこそ『まんぷく』の醍醐味」であるからに他なりません。放送前から昨秋あたりまで大半の視聴者は、「『まんぷく』はラーメン開発の物語」という印象を持っていましたが、それはごく一部でしかなかったのです。
◆まだまだリピートされる挫折と再起