分析対象の感染症について、「1回の接触での感染確率」、「単位時間当たりの接触の回数」、「感染症が感染性を保つ平均時間」の3つの要素を測定や推測によって求めて、これらを掛け合わせて算定することが知られている。各要素の測定や推測の方法については、さまざまな研究が行なわれている。
感染症の拡大予防には、「集団免疫」が重要となる。これは、集団内に免疫を持つ人が多ければ、感染症が流行しにくくなることを利用した感染拡大を防ぐ考え方だ。具体的には、予防接種等がこれにあたる。
ある集団で、Roが3である新たな感染症に備えることとしよう。この集団では、まだ誰もこの新たな感染症にかかったことがない。外部から感染症にかかった人がこの集団に入ったとする。1人の感染者から、平均して3人が直接感染する。
もし、この集団の3分の1の人が免疫を持っていれば、感染は平均して2人に抑えられる。また、3分の2の人が免疫を持っていれば、感染は平均して1人に抑えられ、3分の2を超える人が免疫を持っていれば、感染は平均して1人未満に抑えられる。この感染症はいずれ収束することになるはずだ。
これが、感染症拡大のモデル化を活用した集団免疫の設計だ。感染症のRoの大きさに応じて、集団内の免疫保持者の割合を、(Ro-1)/Roよりも大きな水準にまで高めておけば、集団免疫が働いて感染症は収束に向かうことになる。
このように、感染症の拡大をモデル化することで、集団免疫が働くために必要な免疫保持者の割合を計算することができる。
ただ、実際には、予防接種を受けたからといって、全員が免疫を獲得できるわけではない。仮に、10人が予防接種を受けても、5人しか免疫を獲得できないとしよう。この場合、免疫保持者が必要な数に達するためには、その倍の数の人に予防接種を受けてもらうことが必要となる。