2018年11月29日夜、宮城県仙台市内の一軒家に、サイレンを消した2台の救急車が駆けつけた。周囲には規制線が張られ、一帯は物々しい雰囲気に包まれた。
「この家に住む小2の長女Aちゃんと母親が死亡しているのを、帰宅した父親が発見しました。遺書がなく、部屋に荒らされた形跡もないことから、県警は無理心中と判断したのです」(全国紙社会部記者)
Aちゃんの通う小学校の父母に児童の急死を知らせる通知こそあったものの、それ以上の説明はなく、母娘の死は忘れ去られようとしていた。事態が急転したのは今年1月19日。父親が、Aちゃんの遺したメモを手に会見を開いたのだ。
《しにたいよ しにたいよ なにもいいことないよ わるいことしかないよ いじめられてなにもいいことないよ しにたいよ しにたいよ》
メモ用紙いっぱいに鉛筆書きの平仮名で「しにたい」の4文字が繰り返されていた。
「父親は、『娘は同級生からいじめを受けており、母親もいじめへの対応で体調を崩して友人づきあいが減った』と明かし、そのうえで『学校に繰り返し相談したが、表面的な対応が続いた』として無理心中の責任は学校にあると訴えました。メモは昨年の7月にAちゃんが書いたものだそうです」(前出・全国紙社会部記者)
いじめが社会問題となって久しい。警察庁の発表によれば2016年には320人の小中高生がいじめを苦に自殺した。しかし、母子心中は前代未聞だ。
わが子を守り、育ててきたはずの母親がなぜ娘とともに、自らも命を絶ってしまったのか──。一家の住んでいた仙台へ向かった。
◆死んでしまいたいくらいのつらさ、不安があるんだね
Aちゃん一家が住んでいた仙台市泉区の一角は、仙台駅から車で30分ほどの新興住宅街。周囲には豪邸が数多く、駐車場には高級車が並ぶ。
「Aちゃん一家は、4年ほど前に引っ越してきたと聞いています。お父さんは市外まで働きに出ているようで、お母さんは専業主婦。旅行に行くと、必ずお土産を買ってきてくれるような、心配りをしてくださる律儀な人でした。一家はとても仲がよく、すれ違うと、いつも笑顔で挨拶してくれました」(近隣住民)
クラスの中でもAちゃんは活発な児童だったという。
「地元で名門といわれる幼稚園出身のAちゃんは、小学校でも優秀でした。授業参観では、先生の質問に毎回手を挙げて、答えるたびに笑顔で後ろのご両親を振り返り、ご両親もうれしそうにうなずいていました。
国語の授業では、『先生、その漢字まだ習っていないから、ひらがなでいいと思う』と指摘するほどで、“うちの子と全然違うな”と感心したほどです。そんなに利発聡明だったAちゃんや、教育熱心だったお母さんがどうしてあんなことになったのか、私にはどうしてもわかりません…」(同級生の保護者)