これが発言のほぼ全貌なのに、ワイドショーから何からが“切り取り報道”したのは、たしかにちょっとかわいそう。擁護する人が増えてきたのもわかる気がするわ。発言の全貌を知っていたら、野党議員たちは果たして「今すぐ辞任すべきだ!」とまで言ったかしら。
結局は、何を言ったかじゃなくて、“誰が”が重要なんだよね。大臣は少し前、サイバーセキュリティ戦略担当大臣でもあるのに、「パソコンとか、そういうものはいじったことがない」と言い放った過去があるから、「またやらかした」と世間が反応しちゃったんだと思う。
元アスリートの参議院議員の発言もそう。「オリンピックの神様が池江璃花子の体を使って…」とのたまった彼女自身、子供の頃、生死をさまよう病気を経験している。その上での発言と知るまでは、「ふんっ、私の大好きなフィギュアスケーターに無理チューした人でしょ?」と、過去のムカッを思い出して、悪感情に上書きしたのは私だけじゃないと思う。
大物キャスターやお笑い芸人にしても、彼らの日頃の発言にモヤモヤした感情を世間が抱いていて、そういう下地があってのことだと私は思う。
逆に、今回のことで好感度がマックスになったフィギュアスケーターもいる。空港でいきなりマスコミに囲まれて、「(白血病について)何も知らないし、ぼくは発言をする権利はないと思います」って、即座にこんな言葉が出る?
競泳界のレジェンドは「本人に直接伝えました」と言い、現役スイマーは「池江が? 言葉が見つからない」と絶句した。いずれも好感をもって受け入れられたけど、本当の仲間だからこそ池江選手のことを深く思い、その深さゆえ、軽々しい反応や言葉を慎んだのだと思う。
「わからないことはわからないままにして、わかるまで静かに待つべき」
ワイドショーなどに応えて、病状もわからないのに推測で安いコメントを提供する“御用医師”たちに対して、ある若い医師がそう発言していたけど、それが正しいように思う。
いずれにしても、ある話題でみんなカッカしているときは、「待て、しばし」と深呼吸するくせをつけようと思う。
※女性セブン2019年3月7日号