「マズローは『承認の欲求』には2つの種類があることを指摘しています。
1つは『他者承認欲求』とでもいうべき欲求で、他人からの尊敬や地位、名声、注目などを得ることによって満たされるものです。不適切動画を投稿したアルバイト従業員たちは、『他者承認欲求』に固執している人たちだといえます。この欲求にいつまでもこだわっていると、自分自身を見失うことになります。
もう1つは『自己承認欲求』とでもいうべき欲求で、自分自身を信頼する感覚や自立性などを特徴とし、技術や能力の習得によって満たされる欲求です。この欲求は、自分で自分を承認するためのものです。自分を信じたい、尊重したい、自分で自分の価値を認めたいという欲求があると、自己研鑽をするきっかけになります。
他者からの承認が得られないと自分の存在価値を認められないという人は、本来の自分ではなく、“他者から評価されるための自分”を演じ続けなければなりません。そこに、“中毒性”が生まれる要素があります」
◆ブレずに自分を見つめる
不適切動画の問題に話を戻せば、もしそれらの動画の投稿者たちが「他者承認欲求」に固執しているようなら、従業員研修や社内教育で単にルールやマニュアルを徹底させるだけでは「バイトテロ」は根絶できないことがわかる。そこからさらに踏み込んで、“他者承認欲求だけに振り回されずに、自己承認欲求に従って行動する”ことの重要性を伝える「人間教育」が必要になると舟木氏はいう。
「他者からの評価よりも自分自身の自己評価を重視できるようになるには、客観的に、かつブレずに自分を見つめることが必要です。簡単なことではありませんが、その努力をしていけば、どうすれば自分が自分を認められるようになるか少しずつ分かってきます。『自己承認欲求』に従って生きていくことは、このように日々の努力によって可能になってくるものです」