【著者に訊け】吉田修一氏/『続 横道世之介』/1600円+税/中央公論新社
人間の温かい感情を描いた人気作で、2013年に高良健吾主演で映画化もされた吉田修一著『横道世之介』(2009年)には、続きがあった!
舞台は長崎から上京し、恋と友情とサンバサークルに熱中する18歳の世之介を描いた前作の6年後。留年が元でバブル最後の売り手市場を逃し、バイトとパチンコで食い繋ぐ24歳の彼が、社会の片隅でもがきつつも、その人の好さと押しの弱さで周囲に少なからぬ影響を与えていく姿が、1993年当時の風俗と共に描かれる。
が、私たちは前作で知っている。彼が後に報道カメラマンとなり、ある日、駅のホームから転落した女性を助けようとして命を落としたことを。そう。本作はそんな彼だから過ごしえた、善意の青春小説なのだ。
「この作品は映画が本当に素晴らしかったですし、世之介ってホント読者に愛されてるなあと、僕自身実感する10年間でした。ただ続編執筆は全く頭になくて。中公が創刊する小説誌での長編を依頼された時に、創刊号なんて荷が重いな、誰か伴走者がいないかなあと思ったら、いたんです、世之介が(笑い)。編集者もみんな驚いていましたが、たぶん誰より僕が、彼に会いたかったんだと思います」
作中に〈人生のダメな時期、万歳〉とあるが、昼は品川にある社員5名の海藻問屋、夜は新宿のバーで働く世之介は、同じ留年組で〈山二證券〉に入社した〈コモロン〉と飲んでは愚痴り合い、休日はパチンコ屋に朝から並んで、不愛想女〈浜本〉と台を取り合う毎日だ。