女性活躍の推進が図られている今、長らく専業主婦の人は肩身の狭い思いをしたり、社会復帰を敬遠されたりする風潮まであるという。だが、「専業主婦期間は決してブランクではない」と指摘するのは、働く主婦の調査機関「しゅふJOB総合研究所」所長兼「ヒトラボ」編集長の川上敬太郎氏だ。
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日本プロ野球と米国メジャーリーグで数々の金字塔を打ち立てたイチロー選手が現役引退を発表したが、日米通算4000本を超えるヒットを打ち続けたイチロー選手でも、最後のシーズンは一本もヒットを打つことができなかった。その事実は結果として、メジャーリーグで一本のヒットを打つことの難しさの証明となり、通算4367本の安打記録にさらなる重みを与えたように思う。
イチロー選手がメジャーリーグでシーズン最多262本のヒットを放ったころ、素人目にはいとも簡単にボールを捉えているように見えた。そんな唯一無二の安打製造機の歯車を狂わせた要因として、ある専門家が指摘したのは、およそ一年にわたるブランクの存在だった。
しかしながら、イチロー選手の強肩や走力は健在だった。一年近いブランクの間もトレーニングを怠らず、現役メジャーリーガーとして十分すぎるパフォーマンスを発揮していた。となると、イチロー選手にとってブランクと呼ばれる期間は肩と足には当てはまらず、打撃に関してのみだったと言えるのではないか。
メジャーリーガーに限らず、一般のサラリーマンが自らの仕事に置き換えてみたときも、似たような現象を経験することがある。
例えば、営業部門のエースとして鳴らした人が企画部門に異動し、数年ぶりに営業の最前線に戻った場合。かつては立て板に水がごとく商品説明し、顧客からの無茶ぶりにも瞬時に機転を利かせた切り返しができていたはずが、言葉に詰まってしまう。どうも調子がおかしい。こんな時、営業の最前線という戦場から離れていた期間は、やはりブランクなのかもしれない。
では、営業職としてはブランクだったとしても、ビジネスパーソンとしてはどうなのだろうか。
企画部門で様々な部署の人から意見を聞き、マクロ・ミクロデータを検証し、顧客のニーズや自社のシーズを分析した経験があれば、その経験はきっとビジネスパーソンとしての視野を広げているはずだ。あるいはプレゼンスキルを磨いたり、Excel関数やマクロなどを駆使して分析スキルも磨かれているかもしれない。
となると、ブランクと言えるのは営業職としての現場感覚だけだ。その感覚もしばらくすれば取り戻せるだろうから、結果として企画部門に異動した期間はブランクどころか大いなる成長期間だったということになると思う。
しかし世の中には、今もブランクとしかみなされない期間がある。「専業主婦」として家仕事に専念している期間だ。