では、なぜ専業主婦期間はブランクと見なされてしまうのか。それは、採用や人材活用を検討する企業側が、専業主婦期間に磨かれている能力や経験に目を向けようとしていないからだと考える。採用難の時代に、専業主婦期間が長いという理由だけで選考対象にすらしないとしたら、それは非常にもったいないことだ。
実際に、10年以上の専業主婦期間がありながらPTAなどの活動でプレゼンテーションやマネジメント力を磨き、それらの活動から実力が認められて採用された人がいる。同じくPTA活動でファイル整理力が培われ、その優秀さが認められて社長秘書に抜擢された人もいる。隙なく優秀な人材採用にアンテナを張っている企業は、ブランクと呼ばれてしまう期間さえ疎かにせず、その人の能力を見抜こうと努めている。
しゅふJOB総合研究所では、家仕事で培われた能力を“家オペ力(家仕事をオペレーションする能力)”と呼んでいる。ブランクと呼ばれる期間は、すなわち家オペ期間である。決して空白ではない。しゅふJOB総合研究所のホームページでは、家オペでどんな能力が磨かれ、どのように仕事に活かせる可能性があるのかを発見する『家オペ力マトリックス』を無料公開しているので、ご興味を持たれた方はぜひお使いいただければと思う。
中には、専業ではなく家仕事を夫婦でシェアしている家庭がある。その場合も、家仕事をしている時間から得られる経験、培われる能力があることに目を向けると、価値観が変わってくるのではないだろうか。価値観が変われば、家仕事を敬遠しがちな男性が主夫業を担うことへの抵抗感も少なくなるかもしれない。
専業主婦期間をブランクなどと呼ぶ慣習は、考えれば考えるほど失礼なことだと思う。そんな慣習が、一日も早くなくなることを願っている。
●かわかみ・けいたろう/1997年愛知大学文学部卒業後、テンプスタッフ(現パーソルホールディングス)に入社し新規事業責任者などを歴任。業界専門誌『月刊人材ビジネス』などを経て、2010年株式会社ビースタイル入社。2011年より現職。延べ2万件以上の“働く主婦層”の声を調査・分析する傍ら、人材サービス業界への意見提言を行う。厚生労働省が委託する女性活躍に関するプロジェクト事業の委員なども務める。