少し前まで誰もが一笑に付していた「衆参ダブル選挙」がにわかに現実味を帯びてきた。この猛烈な解散風を自民党内で煽っているのは、萩生田光一・幹事長代行や下村博文・元文科相ら細田派の安倍側近だが、一方の二階俊博・自民党幹事長や菅義偉・官房長官の思惑は別にある。
菅氏は5月17日の会見で「(野党の不信任案提出は)当然、解散の大義名分になる」と語った。
国会の最終盤に野党が内閣不信任案を提出するのはセレモニーのようなもので、通常、与党は粛々と否決して国会を閉じる。政権を倒せない不信任案を大義名分に“解散はあり得る”というのだから、なりふり構わぬダブル選容認に他ならない。
「菅さんの『解散の大義』発言で解散風が強まったのは事実だが、本人は解散の流れを作るまでのつもりはなかったのではないか」と見るのは政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏。
「菅さんは危機管理の人。ダブル選挙を打っても参院選が有利になるという保証はない。今も自民党は衆院で283議席あるのに解散するリスクを負う必要などないと考えていると思う。
もし、このまま解散になれば“総理を超えて解散を主導した”と言われかねないし、選挙に勝ったら勝ったで『菅さんの仕掛けた選挙大成功』となってしまう。負ければ菅さんが判断を間違ったとクビを切られる。どちらにしても黒衣に徹したい慎重な菅さんの望むところではないはずです」