今後、米国は日欧からの輸入車や自動車部品に「追加関税」を課したり、対米輸出規制をかけたりする恐れがありますが、豊田会長が繰り返し言う通り、自動車産業は戦略産業として日本経済の主柱となるべき大きな存在です。
その意味で、「このままでは雇用が維持できなくなる」という豊田会長の発言は、単なる終身雇用制度云々ではなく、日本を代表する産業が国内市場の縮小、アメリカの強硬な貿易交渉などでその存在自体が衰退しかねないという危機感の表れであり、政府与党や世論に発した強烈なメッセージだということが理解できるでしょう。そして、その懸念は今回のトランプ大統領来日でさらに深まった感があります。
さて、日本政府はトランプ大統領の強硬姿勢に対し、タフネゴシエーターとして自国の産業や雇用を守るという強い姿勢を打ち出すことができるのか──。日米貿易交渉は日本経済全体の行方をも左右しかねないだけに、大きな正念場を迎えていると言っていいでしょう。