夜寝る前に読みたい絵本『みずのこどもたち』(佼成出版社)『めざめる』(あかね書房)は、どちらも若き絵本作家・阿部海太の作品。圧倒的な絵の世界と、言葉になる前の思考の宇宙に引き込まれながら、眠りに落ちる。不思議な絵本だ。
こうしてみると、魅力ある絵本は内容的に余白が大きい。絵本の半分は、読み手がつくっているのだ。『最初の質問』(絵・いせひでこ 詩・長田弘 講談社)はまさにそんな作品だ。
「今日、あなたは空を見上げましたか。空は遠かったですか、近かったですか」
ページを繰ると、そんな質問が書かれており、読み手がそれに答える。答えは日によって違う。それでいいのだと思う。
生きるということは「問い」をもつことだ。小さいときから、これ何? あれ何? どうして? と聞いてきた。
「いちばんしたいことは何ですか。人生の材料は何だとおもいますか」
生きるうえで大切な、自分への問いかけが、この絵本から始まっている。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。
※週刊ポスト2019年6月14日号