日本で行われるデモは、今回の香港のデモとはまったく別ものだと感じたね。日本のデモはやはり、1つの組織が主導しているものばかり。それはもちろん反政府的なデモもそうだし、保守的なデモもそう。新聞なんかでは「何万人が参加した」なんて報道もされているけど、結局はそこまで大きな動きではないんだよ。今回の香港のデモは主催者発表で200万人参加したというでしょ。香港の人口の4分の1以上の数だよ。本当に市民が動いたということだよね。
だから、この香港のデモと、日本国内のデモを同じ並びで考えるのは、ちょっと違うと思う。日本のデモは、残念ながら少数派が自分たちの存在をアピールしているようなものだ。もちろん良い意見もあるだろうし、まったくそうではない意見もあると思う。ただ、「国会前に何万人集まった!」なんて喧伝したところで、それが国民全体の意見を代弁しているものだというのはちょっと無理がある。それはそのデモを主導する集団の意見でしかない。
もちろん、日本でだって本当に多くの国民が共感して、政府に何かを訴えるようなデモが生じて、世の中を動かすこともあるかもしれないよ。その可能性は否定できないけど、現実問題としてほとんどの日本国民はデモに参加していないし、何なら報道したところで興味を持たない。つまり、今の世の中にある程度満足しているということ。多くの国民がデモを必要としていないわけだ。この事実は、それなりに前向きに捉えてもいいと思うね。日本の民主主義がしっかり機能している証しだよ。
デモが必要かどうかは、そのデモを主導する集団が決めることではない。市民が決めること。多くの市民が立ち上がった香港ではデモは必要だったけど、ほとんどの市民が立ち上がらない日本はそういう状況ではない。もちろんいろんな問題を抱えているのは事実だけど、デモをしなくていい今の日本は決して悪い状況ではないと思うね。
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香港におけるデモを高く評価するも、その成功を日本国内におけるデモの正当化に活用することは適切ではないと指摘する高須院長。たしかに、一体何をもってして民主主義といえるのか、今一度見つめ直すいい機会となったといえそうだ。
【プロフィール】
高須克弥(たかすかつや):1945年愛知県生まれ。医学博士。昭和大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。大学院在学中から海外へ(イタリアやドイツ)研修に行き、最新の美容外科技術を学ぶ。脂肪吸引手術をはじめ、世界の最新美容外科技術を日本に数多く紹介。
昭和大学医学部客員教授。医療法人社団福祉会高須病院理事長。高須クリニック院長。脂肪吸引やプチ整形など、日本に「美容整形」を広めた第一人者。人脈は芸能界、財界、政界と多岐にわたり幅広。金色有功章、紺綬褒章を受章。著書に『ブスの壁』(新潮社、西原理恵子氏との共著)、『その健康法では「早死に」する!』(扶桑社)、『筋と義理を通せば人生はうまくいく』(宝島社)、『行ったり来たり 僕の札束』(小学館)、『ダーリンは71歳・高須帝国より愛をこめて』(小学館)、『炎上上等』(扶桑社新書)、『かっちゃんねる Yes! 高須 降臨!』(悟空出版)など。最新刊は『大炎上』(扶桑社新書)。