◆人目を気にしても褒める人はいない
そんな中、春子は突然の激痛に襲われ、尿管結石で入院を強いられる。この時、周囲の助けや救急車を呼ぶことすらためらう彼女の頑なさは、果たして性格なのか、時代なのか?
「最近は迷惑をかけちゃいけないという思い込みや刷り込みが年々強くなっている気がします。でもどんな時に救急車を呼んでよく、どこからが迷惑行為なのかも結構曖昧だと思う。
例えば私は昔、ゴスロリ系の服が着たかったのに人目を気にして諦めたことがあるのですが、『あの時、人の言う通りにしてよかったね』なんて褒めてくれる人なんて誰もいない(笑い)。人の忠告もあくまで恣意的な言葉で、考えすぎて何もできないよりは『迷惑』な方がずっといいと、ゴスロリを着られない年齢になって思うんです(笑い)」
鷹揚に見えて、時折縁側で遠くを見つめていたりするゆかりや、女手一つで自分を育てた美貌の母親の教えに縛られる沙希。その母親から〈才能あるんやないですか〉〈うちらとは、ちゃうねえ〉と言われたことで、自らの親の反対を押し切って美大まで出ながら事務職に甘んじる自分をふがいなく思う春子や、ギター片手に世界を飛び回る〈五十嵐〉など、誰もが様々な事情や思いを抱えて生きていた。
「私も些細な違いで壁を作る“同い年”文化で育ったので、もし年上の友達がいたらもっといろんな話が聞けたのにな、とよく思う。この表題も歳をとることを肯定する意味でつけていて、いろんな世代の人と関わって、リッパな〈大阪のおばちゃん〉になるのが、今の私の目標なんです(笑い)」