長引く梅雨。食品の管理がいつも以上に気になる季節。スーパーで買い物をする時は、棚の奥に手を伸ばして、1日でも「賞味期限」の長い食品を選び抜いて購入している人も少なくないだろう。
しかし、最近はこの賞味期限の期日について、そんなに神経質になる必要はないという認識が広がっている。
賞味期限の表示は、「CODEX(食品の国際規格)」によって、日本では1985年に導入された。「年月日」で表示されることが一般的だったが、最近は、表示方法の切り替えを行うメーカーが増えている。たとえば、ハウス食品グループは6月18日、賞味期限の表示方法を「年月日」から「年月」に切り替えることを発表し、来年4月から導入する。カルビーのポテトチップスも、今年6月の製造分から順次、「年月」表示に切り替わっている。
そうした「年月」表示への切り替えは、5年ほど前に、災害備蓄用のペットボトルのミネラルウオーターなどから始まり、最近は加工食品にも広がりつつある。
その背景にあるのは「食品ロス問題」だ。環境省の調べ(2016年度)によると、日本では年間約2759万トンもの食品廃棄物が発生し、そのうち約643万トンが、まだ食べられる状態であるにもかかわらず廃棄されている。食品学博士で食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんはこう語る。
「スウェーデンの研究者に聞いた話ですが、北欧のある国では、賞味期限を『年月日』でピンポイントに表示するのではなく、大まかな表示に変更したことにより、食品ロスが20%以上削減されたという事例があるそうです。現在は日本でも、賞味期限延長とともに、『年月』表示にする動きがあります。
もともと日本の法律上、賞味期限が3か月以上先の食品については日付は省略していい決まりなのですが、トレーサビリティーの観点から、日付まで表示することが一般化していました。すでにマヨネーズや袋麺など、以前より賞味期限を延ばし、年月表示に切り替えている食品も増えています」
トレーサビリティーとは、いつどこの工場で、どの時間帯に作ったかということを、製造の関係者が追跡可能な状態にしておくことをいう。
食品ロスは、私たち消費者全員が向き合うべき問題であることはわかっているが、やはり安全面は気にかかる。賞味期限が延長されたり、表示があいまいになったことで生じる問題はないのだろうか。
食品の保存・加工を研究する元東京農業大学教授の徳江千代子さんが、賞味期限の設定方法を解説する。