かつてはパドックなど行かなかったが、愛馬が出走すると、カメラを片手に見に行くようになる。すると、パドック解説などでよく聞くフレーズの意味がわかってくる。
馬券の軸は自分の愛馬だが、相手はどれだろうと、ほかの馬も見る。すると、やけに堂々とした馬、踏み込みが深い馬、きりっとした目をした馬等々、それぞれの個性を感じ取るようになる。あるいはちょっとカリカリしていたり、不安そうだったりというネガティブな様子もわかるようになる。牧場でサラブレッドを間近に見る機会があれば、なおさらだ。馬場入場後にも注目する。返し馬で騎手の指示通りに走ることができているか、初めての競馬場で戸惑った様子がないか、悪い馬場を気にしていないか──期待は持ちつつも、今日は体調が今ひとつかもしれないなどと思い、馬券購入を控えめにしたりする。
一つ勝つのがいかに難しいことかわかる。惜しいレースが続いていて単勝1倍台になった馬が出走するとき、パドックでは「まあ、連は外さないだろう」といった会話が聞こえることがあるが、そんな思惑に何の根拠もないことは身に染みてわかるようになる。
クラシックの権利を取ったとしても、脚元の不安で回避することもある。北海道まで応援に出かけたのに、出走取消になったなんてこともあれば、レース直前で競走除外になることだってある。馬は生き物であるという、当然のことがわかるのだ。
こうして会員それぞれが、自分独自の視点で競馬を見るようになり、競馬メディアの予想などに左右されずに高配当の馬券を獲ることもできるようになるはずなのだ。
●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
※週刊ポスト2019年7月19・26日号