◆本心では「並びたくない」のになぜ断れない?
実際に「タピオカ」のレポートを書いたという都内の私立大学の女子学生Cさん(1年生)に話を聞いた。なぜタピオカをテーマに選んだのか。
「友達に誘われて何度も人気店に並んだ経験があったからです。本心では『並びたくない』と思っているのですが、断れない自分がいました。大学に入学したばかりで、とりあえず新しい友達を作らないといけないので周囲に合わせてしまうんです。
正直、700円くらいするタピオカはアルバイトをして一人暮らししている自分には高いです。氷ばっかりで、ミルクティがほとんど入っていないものもあるし……。でも実家住まいの友達は、生活費がかからないだけでなく、親からお小遣いをもらえたりするので高いと感じないらしくて。そのモヤモヤからレポートのテーマに選びました。テーマが心理学の『友人関係』だったので、なぜ日本人は流行すると周りに流されるのだろう、というところを調べてみました」(Cさん)
そこから得られた結果はどんなものだったのか。
「私のレポートの結論は、“タピオカブームは人が集団に同調する心理から来ている”ということです。人には集団内部で他人と異なることを恐れる心理がある。他人への同調はこの恐怖に対して、安心感を与えてくれます。また仲間であることを他人に承認されたいという欲求から、人は同調行動を取るのだそうです。
私自身、大学でできた友達グループから外れたくないという恐怖心から、何時間もタピオカのために並んでいたんだと気づきました。そう考えると友人関係のために並ぶことは合理的なことかもしれない、と思えるようになりました。レポートを書いたことで自分の日頃のモヤモヤ感の理由を見つけることができたので満足です」(同前)
流されやすい若者の一過性のブームのように批判されることも少なくないタピオカブームだが、ブームの渦中にいる若者のなかにもさまざまな葛藤があり、それが主体的な学習を促す事例もあるようだ。