この夏クールのドラマが終盤へ差し掛かっているが、盛り上がっているのが「金曜夜」だ。この“枠”で放送されるドラマ3作品が、注目を集めている。クライマックスへ向けどのような結末が求められているのか、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが分析する。
* * *
9月に入って夏ドラマが終盤に突入する中、OL層から熱い支持を集めているのが、金曜夜に放送されている『凪のお暇』『セミオトコ』『これは経費で落ちません!』の3作。
『凪のお暇』は、28歳のOL・大島凪(黒木華)が、仕事や人間関係をリセットする物語。未練タラタラの元カレ・我聞慎二(高橋一生)と、引っ越し先の隣人・安良城ゴン(中村倫也)との恋や、その他の住人たちとの心温まる交流を描いています。
『セミオトコ』は、人とコミュニケーションを取るのが苦手なアラサーのOL・大川由香(木南晴夏)が、あるセミの命を救ったことから、美しい男性の姿になったセミの王子様=セミオ(山田涼介)と一緒に過ごすという物語。地味で冴えない人生が、純粋で優しいイケメンとの同居で幸せなものに一変するほか、同じアパートの住人たちを含めた楽しげな日々が描かれています。
『これは経費で落ちません!』は、アラサーのOL・森若沙名子(多部未華子)が、経理という受け身の業務内容が多い部署で、営業、広報、企画、秘書などの他部署に毅然と対応していくという物語。さらに、営業部の社員・山田太陽(重岡大毅)から熱烈なアプローチを受けての社内恋愛も描かれています。
凪は家電メーカーの営業事務、由香は食品工場の社員、沙名子は石鹸メーカーの経理。いずれもOLである上に、イケメン2人から愛されたり、社内恋愛したり、頭ポンポンされたり。あるいは、一切のしがらみを断ち切る、新たな友人ができる、同じアパートの住人と仲よくなるなど、3人にはポジティブな出来事が次々に訪れます。
この3作は、まるでOLたちの「こうだったらいいのに」という願望を叶えるようなファンタジー。金曜夜の放送なのは、「一週間の疲れを癒してもらう」とともに、「うまくいかないことの多い日常を忘れてもらい、夢を見てもらおう」という狙いがあるからです。
ここまでの約2か月間、夢を見続けてきたからこそ、現在ネット上に飛び交っているのは、結末に対する期待の声。幸せな気持ちにさせてもらい期待値が高くなっている分、その締めくくり方を間違えると、大バッシングのリスクも高いのが、制作サイドにとっては難しいところです。
いったいどんな結末が求められ、何を間違えると尻すぼみになったり、バッシングを受けたりしてしまうのでしょうか?
◆9月に入ったらファンタジーは終了