今、アツいお笑いのジャンルは「モノマネ」だという。最近、バラエティ番組などで、モノマネ芸人が相次いで起用されているのだ。いま、なぜモノマネ芸人なのか。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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このところ、昨年ブレイクしたMr.シャチホコさんやチョコレートプラネットらに加えて、りんごちゃんや沙羅さんなど、モノマネ芸人の番組出演が増えています。
たとえば、りんごちゃんはブレイクのきっかけとなった『ウチのガヤがすいません』を制作している日本テレビのバラエティを総ナメしたあと、民放他局へ進出して活躍中。また、綾瀬はるかさんらのモノマネで知られる沙羅さんは『沸騰ワード10』(日本テレビ系)でリポーターを務めたほか、『99人の壁』(フジテレビ系)ではクイズに挑戦するなど活躍の場を広げています。
その他でも、土屋太鳳さんのモノマネで知られる丸山礼さんが『ジョブチューン』(TBS系)に出演、沢口靖子さんのモノマネで知られるメルヘン須長さんが『VS嵐』(フジテレビ系)に出演したほか、滝沢カレンさん、大坂なおみさんらのモノマネ芸人もバラエティに出演しています。
『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル』(フジテレビ系)、『ものまねグランプリ』(日本テレビ系)、『コサキン・天海の超発掘!ものまねバラエティー マネもの』(フジテレビ系)のモノマネ特番も放送。さらに、8月21日の『梅沢富美男のズバッと聞きます!』(フジテレビ系)では「新世代vs四天王!ものまね芸人大集合!」、7月25日の『ダウンタウンDX』(読売テレビ、日本テレビ系)では「モノマネ芸人スペシャル」などの特別企画も放送されました。
コントや漫才、マジックや大道芸など、他ジャンルの芸人と比べると、その需要増は明らかであり、実際にお笑いお笑い賞レースの上位進出者より、モノマネ芸人の起用が多いことがそれを象徴しています。
今なぜモノマネ芸人の番組出演が増えているのでしょうか? 各局の狙いにモノマネ芸人の現状を絡めつつ掘り下げていきます。
◆ゼネラリストになったモノマネ芸人
モノマネ芸人の番組出演が増えている最大の理由は、バラエティにおける使い勝手の良さ。
かつてモノマネ芸人はモノマネ特番を主戦場にする「モノマネのスペシャリスト」という立ち位置で、モノマネは“演芸”という印象がありました。
しかし、最近では「モノマネだけでなく多方面の芸を持つゼネラリスト」という立ち位置に一変。モノマネを前面に出しながら、グループトークに絡んだり、コントに混じったり、ロケで食リポしたりしているのです。
制作サイドにしてみればモノマネ芸人は、得意のモノマネでスポット的に笑わせてくれるほか、ドラマやCMなどのパロディができる、リポーターやドッキリにも使える、「まさかの本人共演」などの演出も可能。そもそもモノマネは、“ながら見”をしている人も理解できる、いい意味での単純さがある上に、モノマネ芸人のギャラで大物芸能人が出演したムードを醸し出せるなど、作り手にとってのメリットは大きいのです。
一方、芸人サイドに目を向けると、顕著なのは「専門のモノマネ芸人以外で、モノマネを武器にする人が増えている」こと。たとえば、コントの実力が評価されていたチョコレートプラネットがIKKOさんと和泉元彌さんのモノマネで番組出演を増やしたように、「インパクトのあるモノマネできっかけをつかもう」とする芸人は少なくありません。
また、昨年、野性爆弾・くっきーさん(白塗りモノマネ)やガリットチュウ・福島善成さん(船越英一郎さんなど)が多数の番組出演を果たしたように、実力派の中堅芸人もモノマネに取り組んでいますし、若手でもガンバレルーヤのよしこさんが、“つかみ”の笑いとして多部未華子さんのモノマネを多用するなど、芸人たちの間でモノマネが鍵を握る芸になっているのです。
◆飽和状態なのに新星が次々に誕生