【著者に訊け】逢坂剛氏/『百舌落とし』/2000円+税/集英社
タイトルは知る人ぞ知る、野鳥狩猟の囮作戦のこと。
「百舌(もず)も相当に残虐な鳥だけど、その瞼を縫って木にくくりつけ、ギャーギャー泣き喚く声で他の鳥を誘き出す作戦らしい。私も昔、日本国語大辞典で見た時は驚いたけど、残酷な百舌がより残酷な人間に利用される構図が、このシリーズの締めにはぴったりでした」
逢坂剛作「百舌シリーズ」の完結編は、元民政党議員〈茂田井滋〉が両瞼を縫い合わされた上で殺されるという怪事件で幕を開ける。被害者は頸部を千枚通しで一突きされ、現場には例の鳥の羽が。そう、あの伝説の殺人鬼、百舌の手口だ。
が、警察内部で男たちを篭絡し、組織壊滅を図った美人警官〈洲走(すばしり)かりほ〉は既に死亡し、前作の容疑者も消息不明に。そして黒幕の民政党幹事長〈三重島茂〉だけがなおも生き残る中、池袋で探偵を営む元刑事〈大杉良太〉や公共安全局に出向中の特別監察官〈倉木美希〉が新たな陰謀を疑うのも無理はない。何度も蘇り、決して絶えることがないのが、この世の悪であり、百舌なのだから。
シリーズ第1作『百舌の叫ぶ夜』から早33年。エピソード0『裏切りの日日』からは、実に38年が経った。
「ホント、よく書いてきたと思いますよ。私は基本、シリーズは3作までと決めているんですが、読者に続編を期待されるとつい未練が出てね。やはり長年育ててきた人物には愛着もありますし。そのわりには作品内ではさっさと処分しちゃうんだけど(笑い)」