元々これらの研究機関には防衛省からも年100億もの予算が流れ、学術会議が警鐘を鳴らすほど。近年はそこに米軍までが金を出している。2年前の事件を知る大杉は思う。〈たとえ、防衛装備移転三原則と名前が変わっても、そこまで規制が緩くなったとは、思いたくない〉

「私の情報源は専ら新聞です。毎日広げて読む中で、各社違う論調の間に大抵の真実は見えてくるんです。元々このシリーズも公安関係の古い資料を神保町で見つけ、『裏切りの日日』で公安小説と本格トリックを融合させたのが始まり。公安の内実を初めて小説に書いた、という多少の自負はあります。ただし物語の外にも世界はあり、そっちをどう生きるかは、また別の課題として考えないとね」

 小説や音楽や芸術に社会を変えるまでの力はないと、最近、逢坂氏は思うらしい。

「たぶん小説は、小説以上でも以下でもないところに、価値があるんです」

 物語が終わってなお読者の中に生き続ける、百舌の不穏な残像も、その1つだ。

【プロフィール】おうさか・ごう/1943年東京生まれ。中央大学法学部卒。1980年『暗殺者グラナダに死す』でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、1981年初著書『裏切りの日日』を発表。『百舌の叫ぶ夜』『幻の翼』『砕かれた鍵』『よみがえる百舌』『墓標なき街』本書へと続くシリーズは、西島秀俊主演『MOZU』として映像化もされ大ヒット。1986年『カディスの赤い星』で直木賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、2015年『平蔵狩り』で吉川英治文学賞など。169cm、78kg、A型。

●構成/橋本紀子 ●撮影/三島正

※週刊ポスト2019年9月20・27日号

百舌落とし

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン