安倍晋三・首相が「安定と挑戦の強力な布陣」を掲げた改造内閣では13人の新大臣が起用された。
その顔ぶれから、安倍周辺ではこんな声があがっている。「まるで第1次菅義偉内閣じゃないか」。政治アナリスト・伊藤惇夫氏が語る。
「閣僚の人事権は総理にあるが、今回は菅官房長官が大きな影響力を行使したのが目立った。側近の河井克行・法相、菅原一秀・経産相を起用しただけでなく、安倍首相が入閣見送りに傾いていた小泉進次郎氏を環境相に押し込み、外相交代が決まっていた河野太郎氏を防衛相に横滑りさせたのも菅さんの意向でしょう」
新大臣は「安倍人脈」(萩生田光一・文科相、西村康稔・経済再生相、衛藤晟一・沖縄北方相)らと、「菅人脈」の河井、菅原、小泉、河野各氏らにはっきり色分けされ、菅人脈のほうが重要ポストを得た。
自民党の役員人事でも、菅氏は“安倍構想”をひっくり返した。安倍首相は80歳と高齢の二階俊博・幹事長を交代させ、後任に岸田文雄・政調会長を昇格させる人事案を考えていたとの見方もあったが、「岸田後継」へのレールが敷かれることを嫌った菅氏が二階氏の続投を強く推し、“岸田幹事長構想”は潰れた。
菅氏が思い通りに人事権を行使したように見えることが安倍側近には“第1次菅内閣”と映っている。しかし、安倍首相と、「影の総理」の菅氏の力の拮抗は、そのまま政権の不安要因にもなる。