「もうサントリーの経営には情熱を失ったのではないか」(新浪と親しい財界人)との見方も浮上する中、昨年、『文藝春秋』(2018年4月号)のコラム『丸の内コンフィデンシャル』に、「新浪氏が就活中?」と題して、こんな興味深い記事が掲載された。少し長いが引用する。
【サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長の去就が注目を集めている。きっかけは新浪氏自身の行動だ。
一月、スイスで開かれた、世界の要人が出席するダボス会議(筆者注/世界経済フォーラムの年次総会)に新浪氏も参加。この場で企業経営者に「必死に自分を売り込んでいて、次の就職先を探しているようにしか見えなかった」(出席した大手企業の首脳)というのだ。(中略)
サントリーは、今も昔も鳥井家が支配する同族会社。サントリーHD会長で鳥井家に連なる佐治信忠氏は、新浪氏を後継者に据えたものの、あくまでワンポイント。いずれは国内の酒類事業を束ねるサントリーBWS社長の鳥井信宏氏(筆者注/現サントリーHD副社長)に、サントリーHDのかじ取りを委ねるつもりとされ、それは新浪氏も承知している。このため新浪氏は波風を立てないように振る舞い、安倍晋三政権に気に入られることに腐心しているという。
「安倍さんへのすり寄り方は、三菱商事で佐々木さん(筆者注/新浪をローソンの社長に抜擢した当時の三菱商事社長の佐々木幹夫氏)に気に入られようとしていた時と同じ」(政府関係者)との声もある。
安倍政権のお気に入り経営者で、サントリーHDのトップ。これだけ箔が付けば、ダボス会議で自らを売り込む営業活動をする必要もないように思えるが、なぜ新浪氏は精力的に動いていたのか。それは「箔はあるが、“これ”といった実績がないことを、自身が最も良く知っているからでは」(新浪氏の旧知の友人)。また次期社長候補の信宏氏が着実に実績を積み上げているのも確かだ】
同コラムを長々と引用したのは、まさに今の新浪の心境を“活写”しているからにほかならない。サントリーに移って5年。「いつでも創業家(鳥井信宏HD副社長)に大政奉還できる状態にある」(食品業界の首脳)というのも、新浪が就職活動に積極的な理由だろう。