そう語る横井氏自身、先日のジャパンの勝利で改めて気づかされたことがある。それは、「信じる」ことのかけがえのなさだ。
アイルランド戦の劇的な勝利の後にスタンドオフの田村優選手は、試合前にジェイミー・ジョセフヘッドコーチから次のような言葉を送られて心が奮い立ったと話した。
〈誰も日本が勝つことを信じていない。接戦になるとも思っていない。どれだけ犠牲にしてきたかもわからない。信じているのは自分たちだけだ〉
伝説のセンターは、51年前の遠い日を思い浮かべて目を潤ませる。
「アイルランドとジャパンの試合を見て、『勝負に絶対はない。しかし絶対を信じない者に勝利はない』という大西先生の言葉を思い出しました。結局そこなんや。もちろんそこに至るまでの準備を積み上げることも大切だけど、最後の最後は、自分たちの勝利をどれだけ信じられるかにかかってるんや」(横井氏)
1968年のジャパンと2019年のジャパンをつなぐのは、「信じる」という純粋な一念。みんながジャパンの勝利を信じることができれば、ワールドカップベスト8という未知の扉は必ず開く。
●取材・文/池田道大(フリーライター)