●塾側
・中小塾・個人塾では理科・社会まで指導者を揃えられていないケースが多い。さらに英語までとなると、人員の確保が困難になる。たとえ確保できても人件費が上昇するので経営的には厳しい。かといって、通塾費用を上げることは塾生を減少させる可能性が高い。
・塾は、小学校の学習内容と中学入試問題との乖離を埋める働きをしているわけだが、4教科でも6年次には週4日ないし5日通塾するシステムを採っている。このほか日曜日には模擬試験などもある。ここに1教科増は物理的に難しい。
・大手塾のほとんどはグループの中に英会話スクール等を抱えているので人員の確保はできると考えられるが、現行のカリキュラムと受験用のカリキュラムの2本立てにしなければならず、現実には難しい(対話型、検定利用型などの入試であれば現行カリキュラムでも対応可能ではあるが…)。
●学校側
・上位校は英語入試を行っていない。これは、「英語1教科で学力の高い子を採れる」と判断するのは難しいと考えているものと思われる。算数1教科が英語1教科より比較的難易度が高い学校で採用されているのは、算数は入学後の学力と比例していると捉えているからと思われる。またそれ以上に、算数1教科受験者=通塾生であることが大きいだろう。
・現在、中学入試では少数の難関校以外は合格発表は当日発表になっているため、採点業務は綱渡りという学校が多い。ここに1教科増えれば当日発表は難しくなる。
・スタンダードがない状況での作問は非常に労力がかかる。
●受験生サイド
・4教科でも受験生に負担が重く、受験生活の途中で挫折するケースがある。5教科になればその可能性はさらに高まる。
・英語は、他教科以上に家庭環境が成績に影響する。多くの家庭にとっては英語が試験科目に入ることは歓迎しにくい。
・家庭によってわが子につけたい英語力のレベルが異なっている。それを試験科目ということで限定されたくない。
以上、どの立場から考えても、5教科化は現実的ではない。だが、これからの社会を考えれば、普通の私学も外国人子弟、在日の子弟なども多数受け入れるようになるだろう。そうした時点まで考えると、将来的には英語だけで受けられる入試も必要になってくると思われる。