年末の風物詩ともいえる「M-1グランプリ」決勝に向けて、今年も予選が行われている。そんな中、2018年に審査員を務めたナイツ塙宣之さんの漫才論『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(聞き手・中村計/集英社新書)が話題だ。3度決勝の舞台に立ち、08年には最終決戦に進みながらも優勝はなく、「M-1は僕にとってトラウマ以外の何ものでもありません」。だからこそ、あふれ出るM-1への愛。小学4年生でお笑いデビューして以来、「どうしたらウケるか」だけを考え続けてきたという塙さんに、話を聞いた。インタビュー【前編】は、M-1について、そして、ナイツの「ヤホー漫才」についてお届けする。
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◆「笑いは語るものではない」への反論
──塙さんが土屋伸之さんとナイツを結成されたのは2001年、約20年が経ちました。いまや漫才協会の副会長を務める塙さんが、満を持して「漫才論」を出された、という印象を持ちました。
塙:どうしたらウケるか、だけをずっと考えてきたので、そろそろ吐き出したかったんです。飲みの席などで、笑いは語るものではない、と言う芸人もいますが、そう言ってる時点で語ってると思うんですね。そういう人に限って、実は話したがっていたりもしますし。インタビューを受けたことをきっかけに本の依頼をいただいたので、カッコつけずに、この機に、大いに語ろうと思いました。
──2018年にM-1の審査員を受けられました。審査員を辞退される芸人もいるようで、塙さんも悩まれたとのことですが、最終的に引き受けられた理由は?
塙:漫才だけはめちゃくちゃやってきた、という自覚があったからですね。たとえばニュースやワイドショーのコメンテーターは、僕はできないです。でも、漫才ならずっとやってきたから、光栄にも依頼をいただいたなら、やればいいじゃないかと。ギャラももらえますしね(笑)。
──2018年の最終決戦で、「霜降り明星か、和牛か、えぐいくらい悩んで」、霜降り明星を選んだワケから始まり、M-1とはどういう大会かを分析されています。「M-1は100メートル走」という持論をはじめとても分かりやすく、これを読めば、優勝はともかく、いいところまで行けそうです。
塙:しかし僕らは勝っていないから「言い訳」なんですよね……。負け惜しみです。そうやって読んでいただけたら。