10月10日、全国の直参組長が集まって行う幹部会である定例会を開催していた神戸山口組の中核団体・山健組事務所に隣接する駐車場横の路上で、30代と40代の山健組組員が拳銃で撃たれ死亡した。発砲したヒットマンの男が、六代目山口組弘道会傘下というだけでなく、68歳の高齢組員だったと報じるニュースに驚いた人も多いだろう。新著『教養としてのヤクザ』(溝口敦氏との共著)が話題のフリーライター・鈴木智彦氏がレポートする。
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事件の翌日、山健組は幹部たちを緊急招集した。ばかりか神戸山口組の執行部を始め、酒梅組や浅野組など友好団体のトップも山健組を来訪している。
山健組本部のある神戸市花隈町は、兵庫県庁や県警本部が置かれる一等地だ。そのため午後に行なわれた山健組への家宅捜索は、すぐ近くの県警本部から70人の捜査員が徒歩で来訪した。殺人事件の被害者側にもかかわらずガサ入れを受けるのは、警察が抗争事件の報複と見ているからだ。
山口組分裂抗争の激震は深夜に起こった。兵庫県警本部長が火急の事態と判断し、自身の権限で暴対法に基づく使用制限の仮命令を発令(本来は公安委員会が行なう)、神戸市篠原本町の六代目山口組総本部、8月に銃撃事件が起きた弘道会拠点、山健組本部など合計11か所を訪れ、すべての出入り口に以下のように書かれた黄色いステッカーを貼ったのだ。
「この事務所を現に管理している指定暴力団又は現に使用していた指定暴力団員は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定により、この事務所について使用制限の命令を受けています」