この仮命令が出ると、組員は即刻退去しなくてはならない。ただしこうなる可能性を見越して、それぞれの場所に数人程度、住民票を置いている組員がいるとみられる。住民票があると法的には自宅となるため、その組員の出入りまでは禁止できないという。
その後、本命令が出ると有効期限は3か月間で、状況が改善されない限り命令は更新され続ける。地元記者たちを集めたレクで、「どうなったら取り消しになるのか?」という質問が飛んだ際、兵庫県警は「暴力団が壊滅した時」と回答した。
神戸市篠原本町に建つ総本部は、山口組の精神的支柱である。神戸市内の墓所にあった慰霊碑も本部内に移設されており、山口組は聖なる場所を失ったことになる。
山口組100年の歴史の中でも初の事例だ。山口組という巨大暴力団は、分裂抗争に至る過程で親分・子分の結びつきが形骸化し、面従腹背が常態化している。巨大戦艦のボルトやナットが外れているようなもので、母港に停泊できなければ、あちこちが振動して分解するかもしれない。だとすればこれは終わりの始まりになる。その引き金を引いたのが高齢者ヒットマンだったのはなにやら象徴的だ。
10月13日には名古屋市にある弘道会本部ほか、旧本部や倉庫といった関連施設、ヒットマンが在席している稲葉地一家本部、岐阜県野内組など約20か所に仮命令書を貼り付け、組員の出入りを禁止した。
10月18日には六代目山口組の高山清司若頭が服役していた府中刑務所を出所した。神戸陣営が山口組を飛び出し、新団体を旗揚げしたのは、六代目山口組・司忍組長の出身母体である弘道会がナンバー2である若頭までを独占、弘道会支配を強力に推し進めたからだった。弘道会は是が非でもこのキーマンの出所までに報復を行ないたかったろう。