ホークスでは、これらの分析のために専用の解析アプリケーションを作成している。まず、トラックマンのデータと映像データを基に、その投手の全投球を、捕手から見たストライクゾーンのチャート上に点で配置。球種別に色分けもされており、視覚的に認識しやすい工夫も成されている。
そこからさらに分かりやすくするために、球種ごとのデータを抽出。ストレート、スライダー、カットボール、ツーシームなど球種別にそれぞれ、ストライクゾーンのチャートで表示できる。また選手は、球団がライブリッツ社 (スポーツのデータ分析を得意とするIT企業)と共同で開発した専用アプリケーションを通して、それらのデータに24時間アクセス可能だ。
今回特別に、「写真は撮らない」という条件でデータアナリストと首脳陣だけが共有する分析チャート画面をタブレットで見せてもらった。そこには日本シリーズ前の過去数試合で、ジャイアンツのある主力投手が投じたある球種のチャートが、ストライクゾーンを9分割した中のある1か所に固まって表示されていた。
二つ目の視点は、打者ごとの分析だ。
「こちらはオーソドックスな分析です。たとえば、直近のセ・リーグのCSで阪神の近本(光司)選手にこういう攻め方を続けていた……という傾向を読み取れたら、ウチの似たようなタイプの選手にも同じ攻め方をしてくるのではないか。そういう分析をして、情報として選手に提供したわけです」
こちらのデータに関しても、解析アプリ上で、ある打者に対してジャイアンツ投手陣がどのような配球をしたか、一目でわかるチャートが表示されるようになっている。
12球団一といわれるホークスのデータ戦略は、最新技術によって支えられている。その優れた分析能力でジャイアンツの選手の特徴を掴み、日本シリーズで圧倒したのも納得だ。
しかし、最近は日本球界でもデータ野球の重要性が浸透してきており、実際に各球団にデータ解析の部署が誕生している。多少の精度の違いは生まれるかもしれないが、どのチームにも、ホークス並の分析は可能なのではないだろうか。
「おっしゃる通りですね。ではウチのどこが優れているか……少なくともホークスでは情報を共有するシステムがしっかりと構築されています。そこが一番の強みでしょうね」
現在、ホークスのデータ分析チームは5名構成。データ分析担当ディレクターである関本氏の下には、野手担当の加藤暁彦、バッテリー担当の吾郷伸之の2人のアナリストがいて、各ミーティングを担当している。
「ウチは個別に選手と担当コーチ、アナリストの3人でミーティングを行ないます。その個別ミーティングも全面的に信頼して、加藤と吾郷の2人に任せています。各選手、首脳陣、データ分析チーム、そこでデータをうまく共有できている点が強みだと思います」