スポーツ

SBホークス3連覇支えたキーマンが語る「データ野球」の秘密

データを重視するといわれる工藤監督(撮影/山崎力夫)

 たとえば、アナリストが探り出した相手打者の傾向を捕手だけが理解して、リードに生かすのではない。コーチはもちろん、監督や投手もそのデータを把握している。文字通りチーム全体で情報を共有しているわけだ。

「たとえば、日本シリーズの時でも、『このバッターの初球は、何から入る?』『このバッターを2ストライクまで追い込んだけど、決め球は?』となった時、ピッチャー、キャッチャー、監督、コーチ、データ班で『せーの!』で答えを出し合ったら、ぴったり一致したと思いますよ」

 工藤公康監督が「データを重視するタイプ」で、データに明るい点も、ホークスが短期決戦に強い要因の一つだろう。

「毎試合前に首脳陣とデータに関するミーティングを行なったのですが、こちら側から『こういう傾向が……』と示したとき、監督は『うん、そうだろうね』と、既に頭に入っているような反応でしたね。いつ寝ているのか(笑い)」

 ただ、こうして分析した対戦相手のデータを生かす上で最も大切なことは、「まずは自分を知ること」だという。

「極端な例を出すと、相手バッターがフォークボールに弱い傾向があったとしても、こちらのピッチャーの持ち球にフォークボールがなかったら意味がありません。では、どうするのか? 代用できる球種はあるのか? また、たとえフォークボールを持っていたとしても、最近調子が良くなく、抜けることが多いので、あえて使わない方がいいのではないか……そういうところまで、データ・情報を共有してこそ、有効に活用できるのだと思います。孫子の兵法ではありませんが、『敵を知り己を知れば百戦殆うからず』ですね。その精神が徹底されているのが、ウチのデータ戦略の一番の強みだし、日本シリーズでの強さにもつながったんだと思います」

 単純にデータがあればチームが強くなるわけではない。選手たちが、データを生かしたプレーを実現してこそ試合に勝つことができるのだ。では、その手助けのために必要な環境とは──データ分析チームは、そこまで理解した上で情報共有の概念を導入している。ホークスの黄金期は、これからも続くだろう。

◆取材・文/田中周治

ピッチャーの初球を予想することも(撮影/山崎力夫)

様々な担当者や選手がデータを活用(撮影/山崎力夫)

松田宣浩は今年も30本塁打の活躍だった(撮影/藤岡雅樹)

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン