2019シーズンのプロ野球は、ソフトバンクホークスの日本シリーズ3連覇で幕を閉じた。読売ジャイアンツを4勝0敗で退け、CSファーストステージ第2戦から破竹の10連勝。この短期決戦の圧倒的な強さを支えたのが、12球団一といわれるチーム戦略室の存在だ。どのようなデータを準備し、それがどう結果に反映されたのか。チームのデータ戦略のキーマンである関本塁・データ分析担当ディレクターに、ホークスの誇るデータ野球の真髄を聞いた。
現代野球において、データの存在価値は年々高まっている。日本プロ野球界の中で、そのデータを最も有効に活用しているチームが、福岡ソフトバンクホークスだ。
投球や打球の回転数などを測定できる「トラックマン」はもちろん、「ファストモーション」と呼ばれるAIトラッキングシステムを本拠地ヤフオクドームに導入。メジャーリーグと同レベルのデータを計測できる仕組みが築かれている。
野球におけるデータには、さまざまな種類があり、使用目的も分かれている。その中で「短期決戦」において重要となるデータとは──「一言でまとめれば、相手チームや選手の傾向ですね。たとえば、相手バッテリーの配球にどんな傾向があるのか。相手打者の得意なコースはどこか。逆に苦手な球種は何か。そういうデータです」(関本氏)。
ただ、こうした相手チームの分析は、野村ID野球の時代からすでに行なわれてきた。従来のものと、ホークスのデータ分析はどこが違うのか。
「一概には比較できませんが、 データを効率よく蓄積できることによって、以前より精度が上がっていると思います」
たとえば、相手投手を分析する時、ホークスでは、2つの視点からその特徴や傾向を探っていくという。
「一つは、球種を軸とした分析方法ですね。特定の投手のすべての投球データを球種ごとに振り分けると、傾向が見えてくることがあるわけです。たとえばジャイアンツでいえば、『菅野投手が左バッターに対して、ある球種を投げるときは、ほとんどこのコース』とか、『山口投手がこの球種をこのコースに投げてきた場合はほとんどボール』というもの。交流戦もありますし、来年の日本シリーズで再びジャイアンツと対戦する可能性もあるので、あまり詳しくは語れませんけどね」