私立高校の中には、文系・理系に分かれるクラスがあったり、より専門的な学問を学べるクラス、難関大学を目指す特進クラスなど学力別の「コース制」を設ける学校が多いが、いまやその流れは私立中学にまで広がっている。安田教育研究所の安田理氏が、多様なコースを取り入れる私立中学の現状と問題点について考察する。
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近年、私立中学で様々な「コース制」を取り入れる学校が増えています。といっても、御三家やそれに準ずる難関校、上位校でコース制を取り入れているところはあまりありません。
これは、そもそも難関校に入学してくる生徒は、難しい入学試験を突破してきているので、全体的に学力レベルが高い(そもそも低学力の生徒がいない)ことによります。もちろん入学後にはどうしても学力差は広がるので、英語・数学などの教科で習熟度別クラス編成をしているケースはありますが。
一方、中堅校の場合は積極的にコース制を取り入れている学校が多数あります。その理由は大きく2つあります。
まず、中堅校の場合は、上位校に落ちてたまたま入学してきた生徒、偏差値以上のチャレンジ受験だったがたまたま合格した生徒、第一志望でその学校向けの対策に注力したおかげで合格を勝ち取った生徒……と多様な生徒が入ってきています。そのため学習の効果を上げるためにコース制にしているというケースです。
もうひとつの理由は、少しでも学力の高い層(難関大学を目指している層)に受けてもらいたいということで、コース制を採用しているケースです。
コースの名称は当初は“特別に大学進学に向けて指導します”ということで、「特進コース」という名称がふつうでした。が、どこもが取り入れるようになると、多くの中から選んでもらうために「東大クラス選抜」「スーパー特進コース」「最難関国公立大コース」といったインパクトのある名称を付けるようになってきています。
どうでしょう。保護者の方も、普通の学校よりコース制を採っている学校、それも単なる「特進コース」より際立った名称の学校のほうが、学校が大学受験に向けて熱心に取り組んでくれるように感じ、わが子が難関大学に受かりそうな気もしませんか?