◆小学6年生での「コース選択」を考える
しかし、これだけ私立中でコース制が多様化してきたといっても、「受験する小学6年生の段階で選択させるのは酷ではないか?」という方がきっといると思います。そこでタイプごとに考えてみましょう。
●学力別コース
学力別のコースは名称からもわかるように、難関大学合格を第一義に考えているので、入学後に大学受験を強く意識したカリキュラムで授業が進められます。難関校はどちらかというと生徒の自主性に任せる比重が高いですから、面倒見のいい指導を期待してコースを設けている学校選ぶご家庭が多いわけです。
また、高得点で合格すると、特待生となって授業料免除などの特典が受けられる場合もあり、その点に魅力を感じて受験する生徒もいます。
ただ、コース制とひとくちに言っても学校によって違いが大きく、入学後は授業時間数から教材・講習まで別という学校もあれば、名称だけで実質的にはほとんど差がない学校もあります。ですから、受験するにあたってはその学校のコース制はどのようなシステムなのか、よく確認する必要があります。
中高6年間をコースの優秀な同級生たちと共に競い合っていく環境で、わが子が伸びるタイプかどうか、また子どもにハードなカリキュラムをこなすだけの覚悟があるかどうかを見極める必要もあるでしょう。
コース制を採っている学校の場合は、どうしても上位コース・下位コースという感覚が生まれます。それが発奮材料になる子もいれば、早々に自分の限界を意識して意欲を失ってしまう子もいます。そういう点では、コース制の学校は普通の学校以上にわが子のタイプをきちんと見極めて選ぶことが大切になるのです。
●学習内容の違いによるコース
「グローバル」系コースも「サイエンス」系コースもここ数年の動きです。いま社会ではグローバル人材、IT人材の不足が連日のように報道されていますが、学校がコースを設けることでそうした人材を育てることに力を入れているという姿勢を示していると捉えていいでしょう。
また、こうしたコースが増えているのは、わが子をそうした人材に育てたいという保護者が大勢いるということの表れでもあります。
いま囲碁でも将棋でも、楽器でも、フィギュアスケート・スケボーなどのスポーツでも、小さなうちから取り組み、才能を伸ばしているケースはごく普通にあります。英検などでも小学生が2級取得などという話を耳にしますし、ロボットの世界大会出場、プログラミングでアプリ開発などの例も頻繁にあります。
ですから、早くからわが子に合った教育で才能を開花させたいという考え方もありだと思います。
しかし、わが子の才能の見極めは実に難しいものです。本人が本当に好きで、なおかつ才能もあるのか、親のそれとはなしの誘導でここまできているのか──小学生の段階では判断がつかないケースが多々あります。もちろん小学生の段階では神童でも、中高生になってみると平凡な才能という例もこれまた多々あります。
そうしたレベルまでいかないまでも、小学生の時には英語好き、理科実験が好きといった子が、中学校で英語重視のカリキュラム、理数重視のカリキュラムが負担になったり、向いていないことに気がついたり、といったこともあります。もちろん、小学校6年生段階での志望がそのままうまく軌道に乗るケースも多いでしょうが、こんなはずでは…となるケースもあるものです。