そんな経験があるのに、なにゆえに「絶好調の○○が穴馬に乗るぞ。複勝で2000円くらい買っとくか」「どうも絞りきれん。とりあえず74(私のアメフト選手時代の背番号)のワイドでいくか」などというバカをやってしまうのか。自分の軽率さにタックルしたくなる。
この連載を好機に心を入れ替える。齢55、まだ間に合う。勝てる(かもしれない)フォームをしっかりと固め、還暦後も元気に競馬を楽しみたい。そのためには、ささやかながらでも勝つことである。月に4回くらい競馬場に行き、目指すは倍額。最低でもトントン。当てて殖やして笑顔で酒を呑みたい。
先の諺どおり、人生の幸不幸は予測できない。だが競馬での幸不幸は情報の読み方次第。馬券を買うときのさまざまなファクターを検証、考察したい。過去のデータをチェックしたり、旧知の騎手や調教師、競馬記者などを酒席に誘って「取材」では出てこない本音を聞き出したりもしたい。
まずはしっかりと馬を見るためにパドックへ出かけよう。
●すどう・やすたか/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2019年12月6日号