「小2の息子を怒鳴っていたら通報された」。2019年11月3日、47才の母親の投書がある新聞に掲載された。
わんぱくざかりの息子を叱ると、どうしても声が大きくなり、言葉も荒くなってしまうことがある。ある時、子ども家庭支援センターの職員が家を訪れる。「捕まるんじゃないか」「子供を連れていかれる」──母親はその時の心情をこう吐露していた。
11月29日の法務省の発表によると、2018年の児童虐待関連の検挙人数は過去最多の1419人。ここ15年で約6倍に増えている。2020年4月には、全国的に児童虐待防止法が施行され、家庭内でのしつけの一環としての体罰が法で禁じられるようになる。
東京・江東区で虐待防止・子育て支援情報の発信を行う一般社団法人ママリングス代表理事の落合香代子さんが言う。
「親に怒鳴られたり暴力を振るわれることは、子供の脳機能や情緒の発達に悪影響を与えることがわかっています」
児童虐待事件が頻発している背景からも、今、日本は“愛のムチ”と決別しようとしはじめている。
◆これも虐待に!? 親たちの衝撃体験
広島県の会社員で2児の父であるAさんの体験。
「寝室で寝転がって子供と遊んでいたら、誤って子供の頭に足が直撃してしまいました。それも、かなり勢いよく…翌日、急な嘔吐があり、妻が慌てて病院に連れて行った。私も仕事を早退して駆け付けましたが、虐待による暴力だと疑われ…到着から何時間経っても、子供に会わせてもらえませんでした」(Aさん)
日本小児科学会によると、虐待による暴力で年間350人の子供が亡くなっているという。子供の骨折や急な体調不良の原因は虐待が多い。子供の安全を守るため、昨今の医療機関では、このような対応を取るところが少なくない。
神奈川県の主婦・Bさんは、日々のしつけが虐待だとみなされ、児童相談所(以下、児相)に通報されてしまった1人だ。
「息子は小学校低学年まではわがままで甘えん坊で、学校に行くのを嫌がって大変でした。1人で行きたくないと泣く息子を玄関まで引きずって放り出すように見送るのを毎朝していたら、ご近所の誰かに通報されてしまった。しばらくの間、定期的に児相の人が家に来るようになりました」(Bさん)