酒を飲む機会の多い正月。だが近年、若・中年を中心に酒離れが進み、飲酒をしない人も増えてきた。酒を飲むのは楽しい反面、様々な負債を追う。新しい年に、楽しい酒を酌み交わしつつも、そろそろ酒をやめようかと考える人もいるのではないか。とはいえ、酒飲みが酒を断つことはできるのか? 禁酒によって人は何を得て、何を失うのか? 30年間、毎日酒を飲む生活を送り、4年前に酒をやめた作家・町田康さんは、『しらふで生きる 大酒のみの決断』(幻冬舎)に、禁酒の顛末を綴った。「なぜやめたか」を聞いたインタビュー【前編】に続き、【後編】では、禁酒の方法や効用をお届けする。
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◆禁酒のプラスとマイナス──食の楽しみを失い、痩せました
──やめられる前は、「大酒のみ」だったという町田さん。寿司屋で泥酔の挙げ句、お前の握り方はなんだ! と悪態をつき、カウンターを乗り越えて寿司を握ったエピソードなどが紹介されています。どういう生活だったのでしょうか?
町田:当時、自分には2つの義務があったんです。一つは、締め切りまでに売り物になる原稿を仕上げること。もう一つが酒を飲むこと。原稿は午前中に仕上げるんです。僕は何があってもその日の仕事は午前中に書くという方針で、30年間やってきました。それで、仕事が終わったら、もう一つの義務である酒を飲むことにまい進する、そういう生活でした。
──4年前にお酒をやめて、生活はどう変わりましたか?
町田:僕は田舎に住んでるので、車移動が基本なんです。飲んでいたときは泊まるか、タクシーで帰るかしかなかったんですが、今は、夜でも帰れるようになりました。宿代も節約できるし、翌日の仕事にも差障らない。ただ良いことばかりではありません。
──お酒をやめたマイナス面とは?
町田:酒を飲むのが好きだったものですから、美味しく飲むための工夫として、美味しいものを探して買ってきたり、自分で作ったりもしてたんです。旨い肴と旨い酒は一対だったんですね。ところが飲まなくなったら、食べ物もどうでもよくなってきた。雑になった。食の楽しみがなくなったのが、マイナス面ですね。極度の粗食家になった結果、体重が減少したわけです。