レバノンの首都・ベイルートでの会見(日本時間1月8日)で、世界に向けて自らの考えを表明した日産元会長のカルロス・ゴーン氏。日本を出国した12月29日から遡ること9日前、本誌・週刊ポストはゴーン氏に対して直接取材交渉を行なっていた。場所は同氏が保釈生活を送っていた東京都港区の住居である。
2階のリビングに現れたゴーン氏は濃厚のジャケットにノーネクタイのワイシャツ姿。ゴーン氏は今後取材を受けるかどうかを検討する前提として、自身の主張を述べ始めた。
以下は、あくまでその打ち合わせのやり取りではあるが、今から振り返ると出国に至る彼の心情が現われているように感じられた。出国後のゴーン氏の主張を読み解くうえで、重要となる部分の肉声を紹介する。
「私は17年間経営者として日産を導いてきた。業績を上げた、ブランド価値を上げた。それなのに、今では強欲、傲慢な独裁者としてのイメージばかりになってしまった。新聞には日産と検察が作ったイメージの私しか載っていない。しかしそれは間違っている。私は日本人でなく、日本語もできず、その状態で日本に来て努力してきた。経営者としての決断は確かにしてきたが、それが独裁なのか? 私が(イタリアの独裁者)ムッソリーニのような立場なら別だが、日産は独裁が許されるような体制ではない」
通訳が終わるのを待つことなく、間髪入れずまくし立てる。
「私がいなくなったあとの日産は、どんどん業績が下がって、元の日産に戻ってしまった。トヨタやホンダと比べれば、日産だけが落ち込んでいるのがよくわかる」