「同様のテーマでヒットした映画『万引き家族』は基本的に貧困層側の視点で、映画『ジョーカー』では富裕層は『悪』として描かれていますが、本作では富裕層を極めて細やかなディテール、『悪』でなく単純に“貧困に無関心な富める者”として描いています。ビジネスとレジャーで使い分ける2台の車、妻の着る服、スーパーでは値段も見ずにカゴに商品を放り込む、そんな“おおらか”な富裕層家族に半地下の家族が次々と寄生していく様が“現実”を表現しています」
◆驚くべき美術の完成度&緻密なリサーチ
【道路以外はすべて美術セット】
「主要舞台となる大邸宅も本作のために造られたセット。日本のメジャー映画よりはるかに高い製作費をかけ、監督のセンスが光る見事なものです」
【一攫千金を狙う“台湾カステラ”!?】
「劇中でたびたび出てくる“台湾カステラ”は、2016~2017年にかけて韓国で大ブームになった台湾発のスイーツ。日本で大ブームのタピオカのように街中にショップができたもののあっという間にブームは終焉。多くの人が負債を抱えた実際の話なのです」
【高低差を意識したカメラワーク】
「半地下と高台など、本作では高低によっていたるところで貧富の差を表現しています。屋内外のあらゆるシーンにおいて、人物の配置や動きが象徴的に撮られています」
【小道具までリアルに】
「ミネラルウオーターやキャンプ用テントのブランドなど細かい所も緻密なリサーチに基づいています。実際の韓国の現実をありのままに描写することが、貧困を身近に感じ始めている日本人に“こんな社会は間違っている”と考えるきっかけとなっているのです」
※女性セブン2020年2月6日号